本その6

2021年07月12日

向田邦子さんが台湾での取材旅行中に飛行機事故で亡くなって今年で40年。1月にスパイラルガーデンでの没後40年特別イベントからはじまり、その後も様々な媒体で向田さんの企画が取り上げられています。

NHKカルチャーラジオで先週から2回にわたり貴重な音声を聴くことが出来ました。「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」など当時田舎の小娘だった私もよく見ていた番組です。

ラジオでは向田さんが自身の性格や日常の興味、ものの見方などについて語っていて興味深いです。

ぎゅっと見ると一つのことしかわかんない。昔からぼやっと見るところがあって、よそ見の名人だったそう。先生が書く黒板ではなく外で小遣いが草むしりをしてる姿のほうを憶えています。日常の細やかな所やモノを見る眼。何気ないひと言から本質を感じたり、インタビューで話す様子は美しい語りで穏やか、とても50歳とは思えないしっとり落ち着いた魅力を感じました。

以前日経新聞で紹介されていた「海苔と卵と朝めし」(河出書房新社)はよれよれになるくらい何度も読んでいる一冊です。6章からなる構成で思い出の食卓、ウチの手料理、お気に入り、性分、日々の味、旅の愉しみ。その中の「ままや繁盛記」は美味しくて安くて小綺麗で、女ひとりでも気兼ねなく入れる和食の店「あ~行ってみたかった~」とままやの熱気を目の中で想像しています。

幻のソース篇・・よそでおいしいものを頂いて「うむ、この味は絶対真似してみせるぞ」・・・名人上手の創った味を覚え、盗み、記憶して、忘れないうちに自分で再現してみるーこれが私の料理のお稽古なのですー「頭でも痛いのですか?」知らない方はこう心配されます。私はロダンの”考える人”か目を閉じて指揮をするカラヤンのつもりが、口の悪い人は、座頭市とメシを食っているようだと申します・・・向田さんのうまいものへの集中力と気迫が伝わってきました。

東京はまた今日から緊急事態宣言に入りました。飲食店を思うと切なくなります。

悪いこと面白くないことがあるとはしゃいじゃう。と向田さんは語っていました。この夏は外へ出てはしゃぐのではなくIOCと政府のポンコツぶりをこの際よーく観戦しようと思います。